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セミナー・専門講座 || 福祉QC

業務改善の手法「福祉QC活動」を導入しませんか

業務改善はなぜ必要か

 福祉サービスの利用制度化がすすむなかで、利用者の苦情への対応やサービス評価を行うことで、事業者は新たな視点をもって課題解決に努める必要があります。
 また、交代勤務というサービス提供体制の特性から、提供されるサービスの質が均質になるよう、事業者は業務やサービス提供の方法の標準化をすすめる必要があります。

QC活動とは

 QC(quality control)活動は、品質管理や業務改善のための手法で、産業界で導入されています。問題を共有した管理者と職員が、解決すべき課題を明確にして、3か月から6か月の活動期間を定め、具体的な問題解決に結びつけます。
 QC活動は、課題解決のための対策を、要因解析を通して立案することから始まります。対策は業務を通じて実践し、その効果を把握、最終的には、施設の標準化を図り、サービスの向上につなげます。
 また、データ化や図表化を図ることにより、客観的な判断をしながら業務改善を行うことができます。

QC的なものの見方・考え方

 福祉QC活動は、次のような視点と考え方から、福祉実践の分野に応用した活動を行うことを特徴とします。
1.サービスの「質」が第一(量、機会提供、物理的環境から質の面を重視)
2.消費者指向(サービス提供者(職員)の側からの論理ではなく利用者のニーズに焦点をあてる)
3.後工程はお客様(チームでの業務。次工程の職員のために前工程がある)
4.PDCAの管理サイクルを徹底して回す
5.重点指向(多くの問題要素のうち、最も主要な要因・本質に迫る)
6.自責で問題を追求(自分たちの解決責任範囲と他責を明確に分ける)
7.ファクト・コントロール(現状調査、分析等事実に基づく)
8.プロセス・コントール(結果のみの善し悪しではなく、過程を重視する)
9.バラツキ管理(平常値との乖離の状態、バラツキに対し着目。その原因の把握。対応策等の管理を行う)
10.再発防止(歯止め)取り組みの後、前進した時点で再発防止・歯止めを行う。同じ問題の発生を許さない。
11.標準化(歯止めの後、定着した良い方法等は、業務マニュアルなどにまとめる)

期待される効果

 QC手法を通じての業務改善には、次の効果が期待されます。

1.複数名によるサークルが、一つの課題を選定し、業務改善に取り組みます。業務管理のサイクルである、P(Plan、計画)、D(Do、実施)、C(Check、確認)、A(Action、処置・標準化とモニタリング)のながれに沿った手順を使うので、サービスの改善と標準化(マニュアル化)に直接結びつけることができます。
 
2.サービス提供者が問題を掘り下げることで、当事者意識が高まり、利用者満足を高めるための創意工夫への、積極的な取り組みが期待できます。
 
3.複数名によるサークルにより、業務改善を行うことから、OJT(業務を通しての人材育成)の効果が期待できます。

QC活動の手順

 QC活動は、次のようなながれで行われます。このながれは、PDCAとよばれる業務サイクルのながれにあてはめて考えることができます。

QC活動の手順

図

業務改善のサイクル(業務管理の輪)

図

QC活動のツール

※データの図表化や分析に使うツールには、以下のものがあります。これらの手法を用いることにより、職場の状況を数値で表し、事実を把握することができます。

統計活動を主体としたもの
○層別法
○グラフ
○パレート図
○ヒストグラム
○散布図
○管理図
○チェックシート
言語データを解析するためのもの
○親和図法
○連関図法
○系統図
○特性要因図
○マトリックス図法
○アローダイヤグラム図法
○PDPC図法
ブレーンストーミング

日本福祉施設士会の取り組み

 日本福祉施設士会では、1989年(平成元年)より、QC手法を「福祉QC」活動として取り入れ、社会福祉施設の業務改善に向け、その手法の普及を行っています。平成2年からは、「福祉QC」全国発表大会を実施しています。これまでの発表テーマについては、こちらをご参照ください。


福祉QC活動の効果
「第10回福祉QC全国発表大会」発表事例(日本福祉施設士会事務局まとめ)

テーマの選定 入所者の外傷をなくそう ショートステイ(ST)の拡大 資源の無駄遣いを最小限にしよう
現状把握と目標設定
夏場のかぶれ、打撲、ひっかき傷が多い
外傷は、車椅子利用者と寝たきりの方が96%を占める/外傷のほとんどが居室で発生

〔目標〕月平均の外傷件数を2割減にする。
平成8年度、延べ1200日の稼働日があったのに対し、平成9年度は延600日程度に減少した。
措置から利用制度への環境変化、市内に老健施設オープンなど他施設との競争が必要になった。

〔目標〕年間利用数を1000日(前年比56%)増
2週間の光熱費・水道代が約120万円⇒省エネの認識不足

電気⇒明るいのに照明がついていることがある
水道⇒入浴槽に湯が出しっ放しになっている

〔目標〕光熱費・水道代を3割減にする
活動計画の策定 平成11年4月から7月の3ヶ月間の活動に設定。 平成10年5月から11年4月の1年間の活動に設定。 平成10年6月から12月の6ヶ月の活動に設定
要因分析・検証 車椅子⇒とくに空車椅子の停車時のロック忘れが多い

オムツ⇒むれによる陰部のかぶれについては、個人の尿量を測定

爪きり⇒誰がいつ行ったかを確認していなかった

清拭⇒布の材質が硬い
人⇒
STに対する職員の認識不足
対応する者が決まっていない
利用者や家族の意見を反映していない

環境⇒
介護保険制度や市内に老健施設オープンなど他施設との競争が必要になった
物品不足

方法⇒
自己開拓やPR不足、STのメニュー不足や受入体制の未整備
電気⇒
ファンコイルユニットのスイッチ切り忘れ
省エネに対する認識不足
室内の冷え過ぎ

水道⇒
節水意識なし
浴槽の湯を張り込み時、浴槽から湯が溢れ放し
器具のセットポイントが最大値
対策の立案・実施 車椅子⇒停車時のロックの徹底を図るため、チェック表を作成

オムツ⇒陰部のむれをなくすため、個人の尿量を把握、尿量にあったオムツの利用とオムツ交換の実施

爪きり⇒10日に1度の爪きりの徹底とチェック表による確認

清拭⇒布の材質検討、柔らかいものに変更
人⇒
利用者や家族の希望を面接で把握したうえでのケアプラン作成
個人台帳作成/連絡表を個人に渡す

環境⇒
パンフレットの作成配布
掲示板を作成、痴呆専用居室設置

方法⇒
入・退所時の送迎の実施
衣類や物品の貸し出し
電気⇒
最大需要電力をあげないよう運転管理
室温適正化(26度以上)
ファンコイルユニットの適正運転

水道⇒
トイレの調整弁の調整節水に対する意識付け
シャワー未使用時の無駄遣い防止の徹底
浴槽への給湯方法のマニュアル化・漏れ防止弁の設置
効果の把握 目標達成率123%(外傷は23%減)
!波及効果!
オムツは個別対応の意識が高まり、1日のオムツ交換が8回から4回に減少
寮母(父)の業務の整理につながり、口腔衛生、着替え業務の徹底ができるようになった
平成10年度利用者数1000日を突破。平成11年度は1100日を越える
!波及効果!
利用者の3割がリピーターとなった。
約24万円のコスト削減を達成(1ヶ月換算約37万円)
最大需要電力(基本料相当)
約46万円⇒約35万円
電気料金
約51万円⇒約41万円
水道料金
約14万円⇒約13万円
ガス料金
約10万円⇒約8万円
標準化と管理の定着 車椅子⇒停車時のロックを徹底

オムツ⇒オムツ交換の方法をマニュアル化

爪きり⇒10日に1度行うことを標準化し、管理表を作成/爪の切り方をマニュアル化
利用者の要望を利用者宅の面接時に把握
初回利用時に個人台帳を作成し、利用者を把握
施設PRを兼ね、パンフレットやお土産を面接時や退所時に渡す
衣類等物品貸出の実施
入・退所時の送迎実施
電気⇒最大需要電力をオーバーしない運転管理の実施/ムダな電気器具スイッチは切る/クーラーに冷水が通っていないときは、ファンコイルのスイッチを切る/省エネに関心をもつ

水道⇒(対策の立案・実施参照)

(参考)ISO、QCサークル活動、TQMの関係

図

TQMへのパラダイムシフト

  QC(第一世代) TQC(第二世代) TQM(第三世代)
企業・組織像 製造力 製品競争力 尊敬される世代(存在感)
めざすもの 製造品質 製品・サービス品質 経営の質
活動範囲 製造 会社、グループ +関係者との共生
品質志向 適合 顧客の満足 ステークホルダーの満足
品質保証の考え方 プロダクト・アウト マーケット・イン ソサエティ・イン
製品品質 製品Q 製品QCD 総合「質」
管理対象 製品 プロセス 経営システム
管理の考え方 制御・統制 管理・経営 戦略・経営
管理のスパン 維持改善 +改善重視 +改革重視

(参考文献―『21世紀の総合「質」経営』 日本科学技術連盟)