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児童福祉関係

●レッジョ・チルドレン(REGGIO CHILDREN)
再訪を誓う


藤枝 悦子/花井 恵子

乳幼児保育の歴史

 訪れたREGGIO CHILDRENという児童福祉団体は、イタリア北部に位置する人口14万の落ち着いた雰囲気の町レッジョ・エミリア市にあり、乳児保育所(0〜2歳)が13カ所、幼児学校(3〜6歳)が21カ所ある。帰国後、「子どもたちと100の言葉」の本とビデオを見、改めて、REGGIO CHILDRENの果たしている役割と実践の素晴らしさがその歴史の中にもあることを感じました。
 1945年、ここがレジスタンス運動が激しく戦われた地であったことは、その後の市の姿勢と大きく関係しているのではないかと思いました。市民が一つになって学校づくりに取り組んでいく「Brick by Brick運動」は、親が子どもに何をプレゼントしていくのかという原点ではないかと思いました。
 1963年以来の幼児学校のネット化をはじめ、さまざまな全国会議の開催での文献や声明の発表は、イタリア全土に乳幼児期の教育に関する影響を次々と与えていきますが、いつの時も、父母、教師、学校関係者、文化人、政治家、研究者、大学教員、宗教関係者の参加によって、教育実践をより解放的で進歩的な内容に高めていると思いました。
 1980年の半ばには財政法が制定されたり、市の組織を国家に移管させる説も出てきますが、多くの議論の末、市当局は幼児期計画を策定し、子どもたちのために果断な選択をしていきました。市立の施設に加え、国立、私立の幼稚園の制度を混成して強化したり、社会福祉協同組合との協約や親の自主管理等による保育所の開設など、その革新性には学ぶものが多いと思います。
 この50年余の間、大きな可能性を秘めた諸権利の主体である子ども像と、そして創立者であるローリア・マラグッツの存在が、子どもたちの可能性を引き出す大きな原動力になったと感じました。行政がここまで乳幼児保育を創り上げたレッジョ・エミリア市の素晴らしさとイタリアの国のおもしろさを感じました。

最も前衛的な教育

 なんといってもこのレッジョ・エミリア市の特徴は教育の現場にあると思います。園には、創造性、表現、協調性を支えるアトリエリスタがいて、教育、保育学を専門とするペタゴジスタも各クラスにいることが大きく影響を与えています。
 保育所、幼児学校ともに部屋の中にピアッツアという空間があり、そこを中心として各教室、アトリエが配置されています。教材は、自然物では石砂、どんぐり、人工物ではネジ、ピンなどの創造的教材・素材がふんだんに用意してあります。光と影、シルエット、水、コンピュータもあり、これらはおのおのの操作がねらいではなく、新しい要素を作る学びの道具として使っています。
 プロジェクト学習とは1クラスの中で2〜5人くらいが一つのプロジェクトを組んで子ども主体の活動をしています(期間は子どもが決める)。また、ドキュメンテーションをすることによって、子ども一人の学びの軌跡、集団としての子どもたちの広がりの軌跡、教師がどのように学ぶかの軌跡がわかります。
 そして、保育者の専門性としての3つのD、1.子どものカリキュラムをデザインする、2.課題の記録のドキュメンテーション、3.記録とともに語り合うディスコース(親・地域・教師)によって子どもたち全体を支えています。
 これらの内容を見て、街ぐるみで子どもを支え、市の支出の12%を学資資金に充て、「最高の教育を」目指しているレッジョ・エミリア市は、やはり世界で最も前衛的であると感じました。
 なお、残念ながら訪問日には、施設内の様子を伺うことはできませんでした。多くの資料を通じて、広くその活動が知られているだけに、再訪を望みたいと考えています。

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