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研修後記

ベルリン市立幼稚園からわが園の保育環境を考える
−遥か12時間以上の空の旅、言葉や時差に悩まされながらもベルリンの地に学ぶ。


ベルリン市立幼稚園(ベルリン)
◆Ms. HARKOTT氏(園長)

REPORT 難波富江・縄稚貴美子・藤井資恵

 私たちの滞在先の近くには街の栄光を象徴する戦勝記念塔があり、その塔の傍にドイツ社会保険制度を作ったビスマルクの銅像があった。一方で苦難の歴史を象徴する「ベルリンの壁」も、そのほとんどが取り払われた今も、一部当時の壁や監視塔を観ることができた。街並みの中にも近代国家に向け進んだドイツの歴史が感じられたが、苦しい財政事情の下、古い建築物を修復し維持しているらしく、負の財産も含めて歴史と正面から向き合い、文化を継承する姿勢にドイツ人の誇りを感じた。
 ベルリン市では2つの幼稚園を訪問した。午前中に訪れたオフィス街にあった市立幼稚園(旧西ドイツ)では、効率的で個人主義的な保育という感があったが、対照的に、郊外の住宅地の中にある市立幼稚園(旧東ドイツ)の訪問は、子どもたちの可愛い歓迎会では先生のギターで楽しそうに歌い踊る姿にドイツの家庭的温かさを感じた。
 保育施設は壁や天井に素敵な飾り物が多く、季節を取り入れた自然のものを使った子どもの作品が飾られ個性が出ていた。部屋は真四角の見通しの良いものではなく「コーナー」がいくつも設けられてあった。家を模した中2階のコーナーには木製キッチンやソファも備えてあり、子どもたちはその中でごっこ遊びをしながら、社会性や創造性を培っていた。明るさを調節できる天蓋や布で作ったリラックスルームでは、自由に物思いにふけったりできる環境もあった。全体の雰囲気をつくる部屋の照明も蛍光灯は極力使用せず、自然な明るさを求めていた。これらすべてに保育者の明確な意図があるが、たとえば鏡ひとつとっても、目立つように掛けてあるのは自分を自覚させるためとか、保育者が考える発達段階に適切な環境として、子どもが自発的に興味を持つように配慮されたものだった。保育の環境のあり方として大変勉強になった。
 3歳児から6歳児は異年齢のグループで兄弟のように過ごしていたが、0歳から2歳の子どもたちは広い庭の向かいに静かに過ごすことができるような環境にあった。たまたま挨拶してくれた1人の男性保育士が、職域に男女の差がないことを印象づけるものとして映った。
 保育時間は早朝6時から17時まで。しかも14時までに帰宅する子も多く、全園児156名の子どもがいるとは思えないほど、落ち着いた静かな幼稚園の午後であった。
 特に興味深かったのは、施設が管理する食事と家庭が受け持つ食事のバランスが日本とは異なる点である。朝早く登園する子のため、各部屋に子どもが自由に食べられる軽い食事や果物が用意され、かつ昼食は幼稚園で準備されていたが、午後のおやつの果物やサンドイッチなどは、各家庭から持ってきたものを各々食べていたことである。個人の趣向を尊重し、親の役割も重く考えていると受け取れた。
 ドイツの幼稚園から学ぶところが多くある研修であったが、そのままを真似するのではなく、自国の風土や地域や家庭にあった環境をしっかり考えて、自園の特徴を生かした保育環境を整える必要があると思った。

写真:幼稚園外観 内装 内装 内装 グラウンド ベット ベット 遊具 遊具 遊具 スヌーズレン スヌーズレン 参加者一同

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