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 九州・沖縄ブロック第5回海外研修(ベトナム・ホーチミン市)報告

 九州・沖縄ブロックでは、平成24年11月にベトナム・ホーチミン市での海外研修を実施した。本稿では、この研修のメインとなった2日目の内容を中心に報告する。

<日 程>
 内      容
1日目(11/21)移動(福岡発、台北経由でホーチミン着)
2日目(11/22)ホーチミン市第8区の福祉施設を視察訪問
 ・国立の障害児通所施設(ブンティンクラブ)
 ・キークァン寺院(尼寺)が運営する老人ホーム 等
3日目(11/23)スイティエン公園での交流事業
 ・ブンティンクラブの利用者とその家族との交流会
4日目(11/24)移動(ホーチミン発、台北経由で福岡着)

 ホーチミン市の第8区はいわゆる貧困地区にあたり、その地区の障害児通所施設、老人ホームを訪問した。第8区でソーシャルワーカーとして長年活動をしている女性のトアンさん、ベトナム育英会のスタッフの方々にも同行いただいた。
 午前中は国立の障害児通所施設である「ブンティンクラブ」を訪問した。我われの来訪を伝えられていたのか、教室は多くの子どもたちであふれ笑顔の歓迎を受けた。この施設を利用できるのは5歳から18歳までであるが、実際には成人(20歳)までは利用が認められている。95名が登録しており、内90%が身体障害、60%が知的障害を有している。国の施設ということで利用料は教材、衣類等に係る費用を除き原則無料であるが、経済的に余裕のある利用者には一部負担を求めているとのことである。開所は午前中の3時間と短いものであるが、それでもこれまで家庭にしか活動の場がなかった障害児が通所により個々の能力開発がなされ、コミュニケーション力や健康促進等の教育指導が施されることで活動の場が広まったという。3時間という時間では不十分との認識はあり、将来的な開所時間の延長を考えながらも、財政的な制約や国の方針との兼ね合いもあり実現していないとのことであった。ここでは、校長を始めとした13名の職員の、熱意をもって福祉の進展をめざして頑張っておられる姿を見た。
 午後には、キークワン寺院という尼寺が運営する老人ホームを訪ねた。貧困により身寄りのない高齢の女性が約130名入所しているが、寺の寄附により運営しているので利用料は無料である。ただし、個室はなく生活環境も良いとはいえない。大部屋で通路がやっと確保できるほどのスペースに20名程度の分のパイプベッドがぎっしりと詰まっていた。そのベッドの上だけが利用者個人の空間という状況であった。介護は寺の職員が担っており、日本のように特に介護の資格などはないとうかがった。ホームと寺院の間にある一角には納骨堂や炊事場があった。土間で調理する姿も見られ、狭いスペースが無駄なく活用されていた。このような厳しい状況ではあるが、入所者から明るい表情での出迎えを受け、積極的な交流もいただいた。そこに感謝の心がうかがえ、我われが忘れがちなものを見せつけられたような気がした。仏教思想の慈善の事業から制度をともなった福祉事業への転換が今後図られていくのだろうが、助け合いと感謝の精神が続いていくことを願いたい。
 その後、ベトナム育英会と熊本県の社会福祉法人愛隣館(今回の研修にも数名の職員が参加いただいた)が平成11(1999)年より取り組まれている「空飛ぶ車椅子活動」に同行した。この活動は、ベトナムの障害児・者にオーダーメイドでリサイクルした車いすを寄贈するという活動である。第8区に住む障害児のお宅を2軒訪問し、車いすの寄贈の場に立ち会った。本人はもとより家族、近所の方々も大変喜ばれており、改めてこの事業がもたらす福祉サポーターとしての役割の大きさと意義を知った。
 5回目となる今回の視察研修には、過去最多の33名の参加を得た。ベトナム育英会と愛隣館の方々のご尽力により無事に全日程を終えることができた。加えて、現地で行動をともにしていただいたトアンさんにも大変お世話になった。改めて皆様にお礼を申しあげる。
 今回の視察研修は、そもそもの視察研修のコンセプトである「アジアの福祉に学ぶ」という視点が、従前に比べて鮮明になったと思う。参加者からいただいた報告より、感想を一つ紹介する。
 「今回の訪問では、発展途上にある国の、発展途上にある福祉を目にしたような気がする。公的な福祉サービスは増えているようだが、まだまだ動き始めたばかりの印象であり、場所によっては公的サービスより民間の保護や援助によるものに頼らざるをえないのが実情のようであった。貧富の差がそのまま受けられるサービスの差、環境の差として表れているような気がした。『昭和30年代の日本の福祉のようだ』との参加者の声を聞き、改めて日々自施設で提供しているサービスについて振り返った。」
 まさにその国の実情を実際に見たことでの気づきである。こうした気づきを参加者それぞれが施設に戻ってから、今後の事業経営に活かしていくことを期待したい。さらに、この研修を機に、参加者同士の友情と交流が深まるのであれば幸いである。

(文責:日本福祉施設士会九州・沖縄ブロック長 岡田 好清)

平成24年度東海・北陸ブロックセミナー(石川大会)報告

 東海・北陸ブロックでは、平成25年2月5日(火)にANAクラウンプラザホテル金沢にて、平成24年度のブロックセミナーを開催した。ブロック以外の県の会員も含め、35名が参加した。以下、その内容について報告する。
 地域の多くの人と手を取り合いながらさまざまな方々が望まれる福祉サービスを展開していくための手法(ポイント)を学んでいただきたいと考え、1日という短い時間で最大の知的利益を得るべく、2名講師をお招きした。

講演T 「金沢の土壌」(歴史に学ぶ地域福祉) 元金沢市長 山出 保 氏

 江戸時代に加賀百万石の城下町として栄えた金沢は、第二次世界大戦時の空襲を受けなかったことから、市街地に歴史的風情が今なお残る伝統工芸、芸能など独自の文化を誇る街であると紹介された。金沢独自の地域福祉の拠点である「善隣館」について、買い物支援、災害時対応・救助・孤立死防止、家庭における介護予防、生きがいづくりといった役割を果たしていることに触れ、これからの福祉事業について「地域の中で住民参加で行われるべきだ」と強調された。

講演U 「『歳をとると子供に還るのか―子供の視点と高齢者の視点―』 人間の行動には意味がある(心理学的考察) 筑波大学名誉教授 井上 勝也 氏

 井上氏の専門は老年行動科学である。幼児と後期老年期の高齢者の行動で似ている部分があるが、それは決して同じものではない。人は歳をとっても子供に還るわけではなく、見かけ上似ている行動が一部出てくるというだけである。高齢者がそれまでに過ごしてきた長い時間で積み上げてきたものの累積が減っていくことはあるにせよ、まだこの世に登場して間もない幼児と同じではない。発達の逆の順で老化が始まることを説かれた。また高齢者の心と行動について、より正確により深く知るために、心理実験や調査結果を交えながら解説された。
 懇親会には金沢の風土に触れる中で楽しく有意義な時間を共に分かち合った。

(文責:石川県福祉施設士会事務局)