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東京都福祉施設士会 秋季セミナー 開催報告

 東京都福祉施設士会は、平成26 年9月9日(火)に淑徳大学東京キャンパス4・5 号館において、「リスクマネジメント・事故処理と初期対応」をテーマに、施設管理者向けにセミナーを開催し、198人が参加した。以下、講演要旨を報告する。

 本セミナーでは、平方俊雄副会長による開会挨拶に続き、高橋紘会長から東京都福祉施設士会の取り組んでいる研修や、改善「福祉QC」活動、研究について紹介し、施設士会への積極的な参加を呼びかけた後に、脇貴志氏((株)アイギス 代表取締役)による講演を行った。


事故や相談における近年の傾向
 (株)アイギスは、保育所・幼稚園の危機対応や社会福祉法人のコンサルティングを主業務として行っています。相談費用は廉価ではありませんが、近年は相談件数が増えています。おおむね2009 年以降の傾向として、事故の内容そのものは変わっていないものの、利用者あるいはその家族の「他罰的」意識が増加しています。「他罰的」とは、事故の原因は私でなく他が悪いと思い、自分が改めないことから結果として同じ人が幾度も事故を起こすことになります。危機対応においてはまずこのことを意識してください。


事故発生後の危機対応について
 施設側で事故については「危機管理(リスクマネジメント)と危機対応(クライシスマネジメント)に分けられます。危機管理は事故発生前の管理、危機対応は事故発生後の対応です。今回の講演では危機対応を中心に話します。
 危機対応で大切なのは「初期対応」、事故が起きたら何をするかです。そこで必要なのは「客観的と主観的」と「優先順位」です。ある児童福祉施設で、職員が、夕食を食べない2歳児の子どもの口に無理やりに食べ物を押し込みました。これは虐待ですね。県は研修を開き、これは事故ではなく事件ですと注意し、参加者に発言を求めたところ、ある職員からは「毎日一生懸命保育をしています。」との発言がありました。働くことは当たり前であり、社会人としてこの発言は恥ずかしいことです。社会は努力の意思(職員の主観)にお金を払うのではなく、結果に払います。結果は相手が思う事であり、相手が評価するもの(客観)なのです。また、「優先順位」については、人権と命が保育の理念より優先するということです。


初期対応は24時間以内、事故説明は72時間以内
 事故発生後、24時間以内に事実を集めます。事故発生から24 時間以降に事実を集めようとしても、そこには主観が入り、自分の都合の良いように思いが変わってしまうものです。そして事故の説明を行うよりまず、相手に謝ることです。相手が許すまたは納得することは期待できにくくても行うことが必要です。トップは覚悟して謝り、謝らないのなら辞表を出すべきです。
 危機対応としては、72 時間以内に相手に事故の説明を行うことが大切です。ただ、相手に説明をしても納得されないことがあります。相手が納得するのは具体的な「ゴール」であり、72 時間以内に事実に基づいた事故内容と今後の対策を説明しましょう。事故や事件をめぐる裁判の報道で、被害者やその家族は「真実(事実)を知りたかった」とよく言うことがありますが、このように事実を求めています。


事故事例に学び、危機に備える
 安全は、過去の膨大な犠牲の集積の上に成り立っている砂の城ともいえます。事故事例は安全のための宝の山であり、事故を知り、分析すれば防止策が作れます。ただし、砂でできた山ですから、人が気を抜けばいつでも崩れ去るものなのです。
 事故の発生要因の多くは人的要因にあります。「見ていなかった」との事故事例は多いのですが、その人は頭の中で何を考えていて見ていなかったのでしょうか。「見ていなかった」のは、事故が発生しないと思っていたから、言い換えると危機意識が無かったからです。
 また、物的に安全にしたと思うとかえって危機意識が無くなるものです。人的危機意識と物的対策の両方が揃った時が、危機に備えては最強になります。
 事故事例で「知らなかった」は許されません。特に報道された事故と裁判の判例は知っておき、それを元に危機管理をしましょう。最近、保育園で川遊び中に5歳児が死亡する事故がありました。類似の事例では3年連続で3回目となります。対策はあったはずです。老人・障害分野では事故事例集があります。インターネットでも情報は集められます。
 事故に備えた危機管理(リスクマネジメント)はコントロールができます。事故が発生した場合もそのダメージを軽減し、施設のダメージにならないように、誠意をもって、たとえば身なりや服装にも配慮して、トップ自ら事故について説明をしましょう。


(参加者の質疑を受けて補足コメント)
〇「相手の身になって」ということは難しいですが、相手の思いに立って考え、相手の「なぜ」に答えましょう。これは相手の考えを受け入れること同じではありません。
○万が一訴訟に発展した場合、裁判は弁護士と裁判官が進めます。現場としては目の前の利用者のことを第一に考えましょう。
○起きていない事の証明:記録は、法律の世界では信用のある証拠にもなるので、起きたことだけでなく起きていない事もわかるように記録をしておきましょう。例えば、性的虐待については職員と利用者が1対1にならない事だけでなく、記録と職員配置で防止をします。もしも1対1にならないことが配置上難しい場合は、1対1でいる時間を短時間にします。


 閉会挨拶で山川常雄副会長は、「『初期対応』が何よりも大切なことを学びました。脇先生の話を思い起こして対応されるように期待します」と述べ、参加者から脇講師には盛大な拍手が送られた。


【参加者からの感想。アンケートより抜粋。カッコ内は施設種別】
 施設内において、事故の再発防止のために職場では上司から「システムの再検討、見直しをするべき」の指示を受けている。「システムに目を向けろ」と言われることが多く、職員ではシステムについて考えていたが、新たな視点で物事を考えるきっかけとなった。とても新鮮だった。(障害)。危機対応について、また“ 安全”について改めて、考えさせられました。初期対応の重要性、客観性が決めるということ、今後の対応について職場内で考えていきたいと思います(高齢)。すごく良かった。今までは、研修に行かされている感があったが、今回参加できて良かった。この仕事に興味(やりがい)がなかったが……意識が変わった(高齢)。客観的に見て、納得してもらえるような対応ができる環境を用意する事。情報を自分がしっかり持っていることが重要ということを学びました。「自分のところは安全」という思い込みから、意識が薄れてしまうことが恐ろしいと改めて感じました。環境よりも意識を高くもって仕事に務めたいとおもいます。ありがとうございました(保育)。