都道府県福祉施設士会活動報告
北海道ブロックセミナー開催報告
北海道福祉施設士会は、11月12日(火)〜13日(水)の2日間、札幌市・ホテル札幌ガーデンパレスにて、第54回ブロックセミナーを開催した(参加者50名)。
特別講演では、鈴木直道夕張市長が「やらなきゃゼロ!」をテーマに講演を行った。鈴木氏は、東京都職員として2年2か月間夕張市に派遣された後、夕張市長に立候補することとなり、激しい選挙戦を勝ち抜き当時全国最年少の市長となった。夕張市に派遣された時は、財政破綻した夕張が最小の経費で最大の効果を上げる取り組みを提示することで、多くの自治体にとって参考になるモデル的な状況を体験できると思い手を挙げたが、現実には353億円を20年という短期間で返済する計画であったため、返済資金のため経費を削る作業の積み重ねとなり、自分が思い描いた計画とは大きく違っていた。
東京都を辞めて夕張市長となった今、人口減少、高齢化が顕著な夕張市が、少ない職員で効果的な活動を行うため、大胆な人事異動を行い、市民との対話、東京都の連携、国・北海道と協議体制を構築するとともに、まちづくりマスタープランで基本指針を作り、コンパクトシティゆうばりを全国の自治体のモデルとなるように、北海道からも支援を受けながら改革を進めていると述べた。何事も「やらなきゃゼロ」という市長の取組みと、熱い情熱が伺えた。
2日目に開催した基調報告では、橋紘副会長が、「福祉施設士行動原則」を解説するとともに、福祉施設士としてどうあるべきかに触れた。これまで福祉施設は、地域住民や国民全体に認識されるような努力をしてこなかった。また、社会的に認知されるためには、実践として中身を伴うものでなければならないと指摘した。「行動原則」は、利用者・職員・組織・地域に貢献できる喜びを伝える目安となるものであり、福祉施設士は自己研鑽に励み、常にレベルアップを図り、その施設経営のマネジメント手法を会員間で共有し、実践を積み上げることによって社会的認知を得、さらに情報を発信していくことが必要であると述べた。
シンポジウムでは、「福祉施設士のあるべき姿」というテーマのもと、津田利幸氏(黒松内つくし園常勤理事・総合施設長)の進行のもとで、保育・老人・障害それぞれの立場のシンポジストが意見や考えを述べた。
保育分野では、伏見達子氏(札幌緑の苑理事長)が、北海道の生活改善普及員から保育士資格をとり保育経営にいたるまでの経過を自身の福祉観、わが国の現状を踏まえて説明した。
老人分野では、追立正夫氏(倶知安福祉会理事長)が、30年前の施設の立ち上げから、個別グループに分れての取組みや、その間の職員離職などで苦労した経験をはじめ、職員が独自に試行錯誤を繰り返しながら現在にいたるまでの経過を述べた。とくに、福祉施設士のあるべき姿ということを考える場合、職員への姿勢にあるように職員が安心して働ける場を提供したい、職員の幸せを大事にしたいと述べた。
障害分野では、三戸部隆氏(滝川ほほえみ工房管理者)が、学生時代のボランティア体験で障害者と出会い、福祉の道に入った経過からはじまり、現在の施設で初めて経営というものにふれ、自分を鼓舞する形で福祉施設士を目指したことを述べた。福祉施設士の立場から、何に力点を置けば質の高い利用者支援につながるのかと模索を続ける中、基本は職員の満足度が重要だと指摘。さらに、しっかりとした経営哲学を持つことが重要となり、それをあわせて自分をどう高めていくかが大事であると話された。
津田氏は、自分は高齢者福祉に長く携わっているが、介護保険の分野のようになんでも統一的にできるものではなく、地域差があってしかるべきだし、地域独自のケアがあってもいいと述べた。まとめとして、行動原則はあくまでもツールであり、倫理綱領を実現するための柱立てを整理したものである。福祉施設士は、それを参考にしながら地域にあったやり方で主体的に実践し、積み上げていくことが重要であるとした。
(文責:北海道福祉施設士会)
関東甲信越静ブロックセミナー(静岡大会)開催報告
静岡県福祉施設士会は、11月11日(月)〜12日(火)に静岡県社会福祉協議会と静岡市の後援を得て、ホテルセンチュリー静岡で「社会福祉法人に期待するもの」をテーマに関東甲信越静ブロックセミナーを開催した(参加者128名)。
初日に開催した基調講演では、(社福)天竜厚生会理事長で福祉施設士の山本たつ子氏が「社会が求める社会福祉法人経営を実現するために」をテーマに、1.財政基盤の確立、2.機能的な組織の構築、3.人材の確保及び育成、4.地域に根ざした法人経営、5.海外研修生の受け入れと社会福祉法人としての実践的な取り組みについて、天竜厚生会の事例を交えながら、講演を行った。その後、開催した分科会では、高齢者、障害者、児童の3分科会に分かれ、高齢者分野では、CS実践研究所所長・田村均氏が、「健全な組織は価値観の経営を目指す」について、障害者分野では、NPO障がい者就業・雇用支援センター理事長・秦政氏が、「企業における障害者雇用」について、児童分野では、静岡県地震防災センター地震防災アドバイザー・中村晉也が、「地震災害に備える〜防災ゲームを通して〜」について講演を行った。とくに、防災の講演では、参加者は防災ゲームを通して地震災害に備えるアドバイスを聞きながら、真剣に演習に取り組んでいた。
2日目に開催した選択体験では、静岡県ならではという場所に参加者を案内した。国宝の久能山東照宮では宮司に、静岡市の魅力と国宝を保存していく大変さ等を伺った。由比漁港では、駿河湾特産のサクラエビを使用した、簡単漁師料理を教えて頂き、参加者と一緒に沖あがり料理を試食した。また、高度衛生管理型市場でもある荷捌き施設の見学も行った。
静岡県防災センターでは、起震車体験を行った。震度6強の揺れを体験し、立ち上がれない参加者もいた。その他、防災ビデオを視聴による研修や、津波の高さを実感するモニュメントもあり、備えを強化する意識が高まった。参加者には、今回の研修会内容を各施設に持ち帰りいただき、防災の取り組みに生かしていただきたいと考えている。
(文責:静岡県福祉施設士会事務局 吉澤 洋子)
中国・四国ブロックセミナー(高知大会)開催報告
高知県福祉施設士会は、11月12日(火)〜13日(水)の2日間にわたり、高知市・土佐御苑にて第29回中国・四国ブロック福祉施設士セミナー高知大会を開催した(参加者70名)。
記念講演では、「社会福祉法人における事業経営の視点〜福祉の原点に立った経営で安定を目指して〜」をテーマに、叶原経営総合センター・シニアコンサルタント大坪信喜氏が講演を行った。また、特別講演では、第2次安倍内閣・内閣官房参与飯島勲氏が、「政局を語る」をテーマに講演を行った。
2日目は、仁淀ブルーと言われ、日本一の水質を誇る仁淀川の遊覧と、植物学者・牧野富太郎博士の業績を顕彰するために開園された高知県立牧野植物園の散策など2コースに分かれて研修を実施し、各コースとも高知県の自然を満喫いただいた。
【記念講演の内容:大坪氏】
はじめに、社会福祉法が社会福祉事業者の経営に求めるものとして、社会福祉法第24条経営の原則にあるように、経営基盤の強化(効率)、福祉サービスの質の向上(効果)、事業経営の透明性の確保(適正)の3本柱が経営方針になることを指摘した。また、福祉サービスの特性として、1つは、職員の質がサービスの質に直結し、それらは目に見えない状態であること(無形性)。2つめは、職員の言葉ひとつで利用者からの苦情につながり、謝罪等の対応が生じること。その結果、本来行うべき業務が後回しになってしまう事態が発生すること(同時性)。3つめは、対人サービスであるため、合う・合わないというケースが発生すること。職員が10人いる場合、全員が同じ結果を出せないこと(異質性)、という3点について説明を行った。
次に、社会福祉法人を取り巻く環境の変化として、運営体制という措置制度から、経営体制が必要となる契約制度に移行した事で、社会福祉法人は、利用者から高度で多様なニーズへの対応を求められるとともに、利用者に選択されることで、サービスの提供ができる競合の世界で事業を行うこととなり、選ばれる施設・選ばれない施設とに分かれ、社会福祉法人の経営が二極化することになった。
その理由について、マネジメントの視点から次のように説明した。職員に統一した意識があるないか(個々の思いで仕事をしていないか)が、結果的にサービスの二極化を招くことになる。法人の理念・組織目標を定め、マネジメント体制(組織の指揮・統制)を構築することで、トップ→ミドル→ボトム体制という縦のラインを整備しながら生産性を上げていく。また、経営者は常に組織として何をすべきかを考えて人材の配置を行い、指導・監督職は経者からの指示や情報を自らの言葉に変えて、一般職員へ伝える意識をもつことが鍵である。そして、法人内の事業所間が協力し合う環境を作り、法人一体経営体制を意識しながら、法人全体で人材育成に取り組んでいく姿勢が必要である。特に、総務・人事・経理等の人材育成・体制構築を行い、経営を担える人材を育成していくこと。さらに、決算経営指標を常に把握し、経営分析の必要性を高めていく事が大切であると述べた。
最後に、経営理念(感謝・創造)は、経営者の意志であるため、職員全員が分かる言葉で示すとともに、職員一人ひとりがベクトルを合わせられるよう工夫する必要がある。また、役職員全員が納得して、仕事に取り組める環境をつくることで、結果的に成果に大きな違いが生じると説明した。
テーマにもあるように、福祉の原点に立った経営を営んでいくためには、目標・理念をしっかりと定めたうえで、常に経営分析に努め、法人内が一体化して取り組める組織体制の構築が大きな要になると感じる講演であった。
【特別講演の内容:飯島氏】
第1次安倍内閣では、教育・国防・弱者救済などの改革に意欲的に取り組んだが、安倍首相の体調不良により退陣することとなった。第2次安倍内閣では、過去の経験と実績を活かした経済対策(第1の矢として金融緩和・第2の矢として機動的な財政政策・第3の矢として成長戦略)、教育問題(いじめ対策・教育委員会改革・大学ガバナンス改革)、近隣諸国との外交に重点を置いた取り組みを行っていると説明した。
また、社会保障対策として、2014年4月から実施される消費税率3%引き上げ分は、社会保障の充実・安定に充てる予定であること。3.11以降の原子力発電所問題については、原子力発電所をゼロにすることは基本的に賛成だが、ゼロにするためには安易にゼロを唱えるのではなく、代替エネルギーのコスト問題や核廃棄物処理など既に進められている諸政策転換の問題などを多面的に検討したうえで、原発ゼロに向けた具体的道筋をつけるのが政治家の役目であると指摘した。今後の震災対策として、都市の高台移行を計画しているが、それには20・30代の世代が住みたいと思う計画が大切になると述べられた。
最後に、「何かと政治家は弱者救済を口にするが、弱者救済は口に出さなくてもやるのが当たり前。」「国民全員が今の安倍内閣を支持しているわけではない。だからと言って支持しない人の声は聴かないというのではなく、支持していない人の声も踏まえて政治を行うのが本当の政治。」と述べられた。
講演の後の質疑応答では、会員から近隣諸国の環境問題や外交問題、新しい福祉サービスのアピール方法などについて質問が出された。飯島氏の政策構想や信条を踏まえたうえで、政局について、わかりやすく説明され、会員にとって多くのことを学んだ講演となった。
(文責:高知県福祉施設士会)