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平成25年度熊本県福祉施設士会セミナー 開催報告

 熊本福祉施設士会は、平成26 年2月17日(月)に「平成25 年度熊本県福祉施設士会セミナー」を熊本県総合福祉センター(熊本市)にて開催し、県内会員並びに会員在籍施設職員やブロック内各県役員を含む89名が参加した。当日は以下の2つの講義と講師を交えた交流会を実施した。

講演1「社会福祉法人を取り巻く状況と今後のあり方」
講師:厚生労働省社会・援護局福祉基盤課課長補佐 川島 英紀 氏

社会福祉法人の見直しに向けた議論から
 厚生労働省社会・援護局は2014 年度から、社会福祉法人の見直しに向けて動き出している。医療や介護サービスのネットワーク化を図るため、競争よりも協調が必要だとの認識から、具体的には法人合併や法人連携がよりいっそう推進されると予想される。また、規制改革会議の中で議論されているイコールフッティング(条件の同一化)の問題もあり、今改めて社会福祉法人の存在意義が問われている。
 そのような時代変化の中で、登壇した川島氏は、社会福祉法人がなぜ税制上の優遇を受けているのか、今一度振り返って考えることの必要性を強調された。まず、社会福祉法人の特徴について説明し、@継続性の担保(撤退規制)、A非営利性・公益性の維持、B税制上の優遇措置、C地域性を活かしたあるいは収益性に関わらない事業実施、を挙げた。
 中でも、@の撤退に対する厳しい規制や、Cの事業採算のとりにくい地域での事業継続が、営利法人等には真似できない点であると強調された。それ故に、必要最小限のサービス供給が可能となり、社会福祉法人は“ 地域のセーフティーネット”となり得る。すなわち、多様な主体の参入で浮き彫りになった社会福祉法人の高い公共性が、今改めて見直されているという指摘をされた。

地域貢献の一層の推進を
 その後、同氏は、新しいニーズや新しいサービス(市場)への積極的な対応についても触れられた。社会福祉法人の現状として、「制度の後追いをしているばかりではないか」という指摘もあるとのことで、税制上の優遇というアドバンテージを活かして他の民間主体が乗り出さないような福祉サービスに取り組む必要があると述べた。具体的には、「個別法に規定されていない事業(生活困窮者向け事業等)にも積極的に取り組み、『社会福祉法人の地域貢献』をより一層推進する必要がある。しかし、それを実行するには体制の整備が不可欠であり、『施設経営観から法人経営観へ』という視点の転換、『法人の大規模化』が必要である」と強調された。

法人本部の機能強化は急務
 最後に、社会福祉法人の合併・連携についても触れながら、「法人本部の機能強化は急務であり、ガバナンスを効かせて理事会を適切に機能させる必要がある」と述べられた。厚生労働省の第一線で活躍されている同氏の講演に、参加者が真剣にメモをとっている姿が印象的であった。


講演2「職員一人ひとりのコミュニケーション力を高めるために」
講師:オフィスDear 代表 今村 ゆか 氏

 近年、福祉や医療の現場においても「接遇研修」の重要性が指摘されている。そこで、対人サービスに日常的に携わっている施設職員に対して、人と人が相対するときに最も大切なひとつである接遇の心とスキルを学んでもらう講演を企画した。

「見た目が第一」ではない!
 講師の今村氏は、まず「第一印象は6秒で80%決まる」と述べられた。さらにアメリカの心理学者であるアルバート・メラビアンの行った、人間の感情やコミュニケーションに関する研究を紹介し、“ 大きな声で話せるかどうか” が、見た目以上に第一印象を左右すると説明された。それまで“ 見た目が第一”と思い込んでいた多くの参加者は驚きの表情を浮かべた。
 そして、「コミュニケーションは質より量」と述べ、必要なコミュニケーション量をこなして初めて相手に響く言動がつかめると指摘した。また、気持ちよい関係づくりのヒントとして、「傾聴」と「承認」の重要性を説いた。中でも「相手の名前を呼ぶ」ことと「ありがとう」を口にする行動が大事であると説明された。

TA(交流分析)の演習とアサーティブ・コミュニケーション
 プログラムの後半には、「TA(Transactional Analysis)=交流分析」演習を実施した。エゴグラム(Egogram:人の自我状態を5つの要素に分類し、各要素別にグラフにしたもの)を参加者一人ひとりが作成し、各々のタイプについて説明がされた。ただし、理想的なエゴグラムというものはなく、自分の性格を考えるツールとしてエゴグラムを活用することが重要であるとのことであった。さらに「アサーティブ・コミュニケーション」についても触れられ、「誠実」、「率直」、「対等」、「自己責任」という4つの柱を土台としながら、“自分と同様に相手も同じように大切にする”(=アサーティブな態度)コミュニケーションの重要性を指摘された。



 両講師からは、「福祉が置かれている社会的な状況」と「施設内で生じるコミュニケーション問題」という、参加者にとって大変有益な情報を提供いただいた。日常業務に忙殺される聴講者が、一度立ち止まって自らと福祉の本質を振り返るよい機会となったと評価している。セミナー閉会後は、会場近隣にて講師を交えた交流会が開催され、参加者相互の親睦を深めるとともに、貴重な情報交換の場となった。


(文責:熊本県福祉施設士会会長 岡田好清)