日本福祉施設士会

DSWIスクエア 平成27年度 4月号

ブロック・都道府県福祉施設士会の活動報告

平成26年度東海北陸ブロック福祉施設士セミナー開催報告

三重県福祉施設士会は、平成27年2月5日(木)~6日(金)に「平成26年度、東海北陸ブロック福祉施設士セミナー」を三重県社会福祉協議会の協力を受け、三重県社会福祉会館(津市)にて、会員並びに会員在籍施設職員等22 名が参加し開催した。当日の講演等の概要について報告する。

1日目の冒頭、三重県福祉施設士会高山宗親会長の開会挨拶に続き、日本福祉施設士会の森田弘道会長より基調報告があった。従来社会福祉事業は政府の諸施策によって支えられてきたが、今日、社会福祉法人は進んで時代のニーズを発見し、必要とするところに対応する先導的・主体的な行動が求められている。社会福祉の分野で社会福祉法人以外の経営主体の参入が進み、社会福祉事業における過大とみられる内部留保が注目を浴び批判を受ける状況となり、法人への課税も議論となった。本来、社会福祉事業者は、終始非営利であるとすれば、社会的、公益的な財産を増やし、新規に福祉事業に投資して社会的な富を増やすための資源とすることが大切である。いわば、公益事業である。これからは、さらに社会福祉法人の経営は極めて重大な課題となり、社会福祉法人の経営の真の専門家となることが本会会員の目標である。森田会長はこのように述べた。

続いて、厚生労働省「社会福祉法人の在り方等に関する検討会」委員であった西元幸雄氏(社会福祉法人青山里会常務理事)より、「社会福祉法人の存亡をかけて」と題しての講演があり、①規制改革会議、社会福祉法人のあり方等検討会の議論からみえる論点、②社会福祉法人のガバナンスと組織、③社会福祉法人の経営状況と事業戦略を考える、をテーマに説明があった。

2日目は、特定社会保険労務士、辻 義信氏より、「社会福祉施設における労働問題」と題して、職員が法律に則って、自らの権利の行使・賠償を求める時代に使用者としてどう対応するのかというテーマで、各事例を交えての講演があった。
まず、解雇を回避するためのポイント整理として、①解雇に値する事由に該当する事実があるかどうか、②使用者がいかに対応したかどうか、が大切であるということであった。また、解雇回避のための実務対応として、退職届を本人の意思で出してもらう(自己都合退職)。さらに、やむを得ず解雇しなければならない場合でも、必ず合意解雇(普通解雇)の形をとることが必要であるという指摘があった。

次に、問題職員に対する労使トラブル対応を取り上げ、①協調性に欠ける職員への対応、②怠慢不良の職員への対応、③勤務態度不良職場の秩序を乱す職員への対応、④精神疾患の職員への対応、⑤出勤しない職員への対応、等の事例について説明された。
さらに、有期労働契約者の更新時トラブルへの対応、年次有給休暇に関する労使トラブルへの対応等についても説明があった。
なお、1日目、セミナー終了後は、森田会長をはじめ、講師を交えた情報交換会が開催され、参加者相互の交流を深めるとともに、貴重な情報交換の場となった。

(文責:三重県福祉施設士会代議員 山野文照)


平成26年度九州・沖縄ブロック第7回 海外研修報告

九州・沖縄ブロックでは、平成26年度海外視察研修を平成26年11月22日から11月25日までの日程で、カンボジア・シェムリアップ市で実施し、10 名が参加した。本ブロックでは「福祉の原点を学ぶ」という趣旨で、アジア諸国の中の福祉施設を対象に毎年度、海外研修の機会を設けている。研修内容の概況を報告する。

ブロック運営による海外研修は7回目となり、事業として定着をしてきているが、回数が増すごとに訪問国や訪問施設の選定等、研修の目的に沿った選択肢の狭まりを感じている。今回は旅行会社を通じて現地エージェントの紹介を得て企画実施の運びとなった。参加者募集には苦労し、添乗者も含め10名の参加を得たが、案内時期、参加対象者の範囲、目的地の選定、日程の組み方等、今後の実施に向けての課題が生じた。

カンボジアは、ポル・ポト政権時代の負の遺産もあり、アジアの中では最貧国の一つである。苦難の時代を経ながらも別称「微笑みの国」といわれるよう、多くの人々の笑顔に接し救われる思いがした。滞在初日は、世界遺産のアンコール・ワットを見学。欧米系を含めた観光客の多さに圧倒され、遺跡の規模に驚嘆し、歴史の重みを実感。歩行距離や暑さも加わって、感動の中にも年配者にはハードな行程であった。

2日目は、ハンディキャップセンター、孤児院、シルク織の職業訓練センター等の各施設を訪れ、最後に農村地区に赴き、井戸の贈呈式を行った。以下、団長としての所感を述べる。
第一は訪問先の選定である。今回は、インフラも未整備であり経済的に厳しい状況下のカンボジアを訪れたが、農村部の生活環境にはカルチャーショックを覚えるほどギャップの大きさを感じた。コミュニティを支える基盤は、助け合いなくしてありえないという現実を体験し、研修趣旨に照らしても選定先は正解だったと思われた。
第二に、現地で日本語を指導されている方とその生徒たちとの出会いで感じるものがあった。急遽食事会にも招待し、ガイドも含め現地の若者たちとの交流会を催した。彼らは、日本への憧れが強い。これまでの訪問国同様に、繋がりの契機にとの思いから、国際的な人的交流を深めていくことの大事さを考えた。
第三には井戸の贈呈である。事前に提案を受けていたものの、参加者には当日まで内密にしていた。既に井戸は完成しており、現地でも使用されてはいたが、贈呈式という場を設け、参加者一同への披露と住民との交流というイベントを行った。劣悪な水事情が一変した住民の喜びは大きく、大変感謝された。私たちのささやかな志を浄財の形にして支援できることを実体験することで、福祉施設士会としても何らかの貢献が可能なことと、社会的認知度を高める一助にもなるのではないかという思いを強くした。
第四に、物質的支援だけでなく福祉に関する制度や技術面での援助や指導もこれから検討する余地があるのではないかと思われた。
第五は研修に臨む姿勢である。参加者は少人数であったが、真..に研修と向き合う気持ちが伝わり、本会の学習団体としての特性を示すことができた。当たり前といえばそれまでだが、これからも基本姿勢は崩さないようにしていきたい。

最後に、今後この事業を継続していく上で、前述の諸課題を踏まえて更に発展させるために何をどうするのか問い続けていきたい。二泊四日というややハードな日程であったが、本来の目的と参加者同士の親睦交流を深めることができたことを喜ぶとともに感謝している。また、現地でのガイドや訪問施設の方々の温かい歓迎に改めて謝意を表したい。今回の研修を通して参加者各位の施設の中での活動に何らかの得るものがあれば望外の喜びであり、これからの参加者各位の活躍を期待したい。

(文責:熊本県福祉施設士会会長 岡田好清)


関東甲信越静岡ブロック 改善(福祉QC)活動
サークル個別指導講座実施報告

日本福祉施設士会では、改善活動の一つとして福祉QCを多元的に進めている。本個別指導講座は、一般財団法人日本科学技術連盟の協力を得て、日本福祉施設士会が平成18年より開始し、その後、関東甲信越静ブロックが運営を担当し、平成26年度で9年目を迎えた。各会場別に専門講師がつき、QC活動を初歩の理解から実践発表までの10回にわたり個別指導を行っている。受講者は、改善手法の習得、活動の実施方法、発表用のパワーポイントの作成までを具体的事例を基に指導を受ける。これにより、問題解決能力、職場管理能力、チームワークの向上だけでなく、パソコン操作技術を含めた能力の向上をはかり、施設の活性化の効果も期待している。施設の方針に基づき、業務改善を職員レベルで考え、実施するところに大きな意義がある。
平成26年度(第9回)改善(福祉QC)活動 サークル個別指導講座(日本福祉施設士会関東甲信越静ブロック主催)は、2月23日の発表会を持って終了した。概要は以下のとおりである。

1.期間及び指導内容

(1)5月:管理者・メンバー導入講座(活動に必要な知識、手法の理解)
(2)6月~1月:定期個別指導活動の実施(計8回)
改善活動が効果的に行われるように月1度、サークル毎に実践経験の豊富な講師による個別指導を行う。メンバーはその指導を施設に持ち帰り活動を進める。日程は会場ごとに異なる。
(3)2月:発表会。資料集用の印刷原稿を作成し、活動の成果をパワーポイント等で発表する。
事務局で各サークルの資料を集め、資料集を作成。発表会参加者に配付した。
①  23 サークルが8サークルずつ2会場、7サークル1会場に分かれて発表を行った。
②  発表の1サイクルは20 分(発表:13 分、質疑:2分、担当講師コメントならびに修了証書授与:3分、発表者入替:2分)。
③  休憩時間に限らず、自由に発表会場を移動し、希望の発表を聴講可とした。
④  全サークルの発表終了後、茶菓を用意し、約1時間の交流会をおこなった。参加全23 サークルから1年間の苦労話等を伺い、講師全員から感想や激励等を頂き、当日応援に駆けつけた各施設長からもサークルへの慰労と励ましの言葉を頂いて懇親を深めた。

2.講座の特長

サークルは職場の任意の数名のメンバーで構成し、具体的なテーマを決めてワークショップ形式で活動を進める。1会場3サークルを基本とし、施設ごとに講師を招くよりも、割安な費用で受講できる。指導ごとに進捗状況を事務局に報告。
26年度は22 施設・23 サークルが参加し、講習会は10か所で実施した。

3.指導会場

埼玉、東京、神奈川、山梨、長野の各都県で計10か所

4.講師

一般社団法人日本科学技術連盟から推薦された講師陣9名

(事務局及び問い合わせ先、文責:関東甲信越静ブロック長 東京都福祉施設士会会長 髙橋 紘)