日本福祉施設士会

DSWIスクエア 平成27年度 12月号

ブロック・都道府県福祉施設士会の活動報告

東北ブロックセミナー福島大会 開催報告

東北ブロック福祉施設士会・福島県福祉施設士会は、10月14日(水)・15日(木)の両日に渡り、東北ブロック福祉施設士セミナーをザ・セレクトン福島(福島市)で開催し、東北各県から社会福祉施設の施設長等63名が参加した。
東日本大震災発生から4年7か月がたった福島県では、津波そして原子力発電所の事故により、多くの人々が今なお、ふるさとを追われ仮設住宅などでの生活を余儀なくされている。
本セミナーでは「東日本大震災からの復興と教訓~原発事故による社会福祉施設の現状と課題」をテーマに掲げて発表が行われた。初日の発表の概況を報告する。

発表①「 福島第一原発から30km圏内の真実私は何を守れたのか!」

講師:特別養護老人ホームなごみの郷元職員 大井千加子氏

大井氏は、震災発生当時、福島県南相馬市の介護老人保健施設の介護長として勤務していた。地震発生後、利用者とともに自主避難中に津波に襲われ、施設は全壊。目の前で多くの生命が失われる。津波が引いた後も、大井氏たち職員は、入居者の生命を守るため、まさに命を懸けて取り組んでこられた。さらに福島第一原子力発電所1号機の水素爆発に続いて避難指示が相次いで出された。当初に避難した受け入れ施設が全て30キロ圏内にあったため、職員対応が困難となり、食料も少なくなり薬も届かない、水も出ないという事態に至る。混乱の中で各地を転々とし、ようやく福島市の特別養護老人ホームなごみの郷に落ち着いたのは、3月17日の夜であったという。大井氏は、福島市内に落ちついた後も、浅い睡眠と悪夢、体の震え、止まらない涙、言葉や映像への敏感な反応が起きるなど、惨事ストレスによる心身の不調にも苦しまれた。4年が経過して多くの人の優しさ、真心に触れることができたと語り、参加者の涙を呼ぶ発表であった。(当日配布資料からの抜粋を別記)

発表②「 子どもの安全な環境~放射能から子どもを守る」

講師:創世福祉事業団 霊山三育保育園園長 齋藤厚子氏

原子力発電所の事故により、自然環境は放射性物質に汚染され、保育園を取り巻く環境は大きく変化した。福島県北部にある霊山三育保育園では、園庭の除染を行うが、外出時の服装や遊び方、生活にも大きな制約を課せられることとなった。その結果、1年が経過した頃から、子どもたちの発達には異変が感じられ、運動機能面や集中力の低下した子どもが多くなったという。斎藤氏や保育士たちは、放射線や放射性物質についての知識を高めながら、日常生活の工夫や、これまで以上に五感を刺激する保育内容に取り組んできた。そして、起こる可能性の低いリスクを強調するよりも、放射線以外の健康に与えるリスクを少なくする生活を心がけるとが大切であると説明した。齋藤氏は最後に、多くの困難があったが、これからも子ども達の幸せと、安心して過ごせる保育環境に力を注いで行きたいと述べた。

(文責 福島県福祉施設士会事務局)

医療・福祉の防災に何が求められるのか
(大井千加子氏作成資料から抜粋)

1.施設として、職員として

最悪を想定する

① 本当に全員避難は可能なのか?(昼・夜)
② 医療・福祉の職員として、まず優先されるものは何か?
  ・立場、地位、関係をどのように活かせるのか
③ 各種データの保護
  ・利用者、職員、法制度、関係機関データも含む
④ 人・物の不足時にどうするか?
  ・協力者は? 何をどのように? いつまでに?
  ・連絡網は機能しているか? 機能不全時にどうするか?
⑤ 最終的に施設や職員はどうなるのか?

遺体安置所で必要だったこと

⑥ 利用者と確信できる根拠
  ・顔だけでは不安→衣類の名前・貼り薬の名称・古い傷・医療的処置 等
⑦ 地域に詳しい職員
⑧ 協力者(1人では抱えないこと)

2.地域や行政との連携の確保は

避難や被害は施設だけではない

① 地域との関係の構築
② 具体的に、誰が来てくれるのか? どこへ行くのか?
③ 津波ハザードマップの確認。「想定以上」も考える
④ 行政の早い呼びかけ、実際に足を運ぶ
⑤ 短時間で多くの人を運搬可能な車両と人員の確保
⑥ 防災無線は機能しているのか。全地区を網羅しているのか?

3.自分として

最悪を想定する

① パニックにならないのか? (昼・夜)
② 自分が、何を、どのように守るのか?
  ・具体的な連絡手段・避難場所を確認しておく
  ・災害時の持ち出し品の確認
③ 自分はどこまでなら職務に従事できるのか?
  ・命、家族、経済、ストレス・・
  ※きれいごとではない
④ 自分を助けてくれるお守りの確認
  ・生きる糧になるものを持つ。生死は紙一重。


関東甲信越静ブロックセミナー新潟大会 開催報告

10月15日(木)~16日(金)、新潟県新潟市の中心、日本一の大河信濃川の河畔に建つホテルオークラ新潟において、関東甲信越静ブロックセミナー新潟大会を開催した。本年度は92名の会員が参加し、水と緑とお米の都で「これからの福祉施設士の役割」と「今後高まる多様な福祉ニーズに応えて」をテーマに研修を行った。3本の講演内容を中心に報告する。

研修1「一生の仕事が見つかるディズニーの教え」

講師:公益社団法人難病の子どもとその家族へ夢を 代表 大住 大住氏

大住氏は、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドを約20 年間勤めた後、難病の子どもとその家族を東京ディズニーランドに招待する団体を設立した。ディズニーで得た仕事の理念が大住氏の行動の根幹であり、いきいきとするためのヒントを沢山語っていただいた。大住氏の力強い声で会場は静まり返り、参加者は食い入るように拝聴した。
その後、ミニコンサートとして、ソプラノ歌手の永桶康子氏(ピアノ伴奏:浅野加歩理氏)に、心和む故郷の歌、新潟の旅情を歌っていただいた。美しい歌声からは旅愁と心の癒しを多くいただいた。

研修2「福祉施設の危機管理について」

講師:危機管理アドバイザー 渡辺初雄氏

渡辺氏は、東日本大震災で発生した福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故に際して、その危機を瞬時に判断して周囲の人々に呼びかけ、福島県川内村から新潟県に避難をしてきた。その後渡辺氏は、各地において「語り継ぐ福島」「今語られる勇気と決断 3.11 福島の真実」をテーマに、学校、地域社会で講演活動をしている。大規模災害時に求められる福祉施設の危機管理のあり方を語っていただいた。

記念講演「連合艦隊司令長官山本五十六の真実」

講師:長岡市河合継之介記念館館長 稲川明雄氏

「やって見せ、言って聞かせ、やらせてみて、褒めてやらねば人は動かじ」。この言葉は、連合艦隊のトップであった山本五十六(新潟県長岡出身)の人心掌握術として有名な名言である。山本五十六の隠された真実と人を動かすマネジメントについて、稲川氏の巧みな話術により笑いと感動とともに参加者は聞き入っていた。

最後に、次回開催県の群馬県福祉施設士会よりご挨拶をいただき、本年度のブロックセミナーを無事終えることができた。参加各位への感謝と、セミナーの企画立案準備に携わった新潟県福祉施設士会実行委員の皆様に感謝を申しあげます。ありがとうございました。

(文責 新潟県福祉施設士会理事・事務局長伊東一男)