日本福祉施設士会

DSWIスクエア 平成27年度 6月号

ブロック・都道府県福祉施設士会の活動報告

平成26年度熊本県福祉施設士会セミナー開催報告

平成27年2月25日(水)に、くまもと県民交流館パレア(熊本市中央区)において、県内外から56 名の参加を得て「平成26 年度熊本県福祉施設士会セミナー」を催した。以下、各講演の概要について報告する。

講演①「次世代コミュニケーションとコーチング」

一般財団法人CCIジャパン代表理事 元田曉輝(あきてる)氏

現在の日本は、核家族化・少子化の進展と共に、ジェネレーションギャップもますます広がりつつある。また、情報社会において個人の経験や価値観は更に多様化しており、その結果コミュニケーションの障害が起こりやすい状況にあるともいえる。個人の力が組織に有機的に作用していくためには、共通点と相違点を大局的に見つめ、「お互いに学び合って向上しようとする視点」が不可欠である。その意味からも、ビジネスの場のみならず日常生活のあらゆる場面で、双方向型アプローチのひとつであるコーチング手法に注目が集まっている。
元田氏は、私立高校教員とし36 年間教壇に立たれ、生徒指導にもご尽力されてきた。退職した現在は、「個人や組織を大きく成長させるプログラムを多くの人々と分かち合うこと」をミッションとして活動を展開している。最近は、大学での教員養成に携わりながら、日本NLPコーチング協会認定NLPコーチとして各種セミナーや企業研修を指導している。
元田氏は、DVD の映像を用いながら〝思い込み〟の怖さについて取り上げ、「思い込みが偏った見方につながる」という自身の生徒指導の経験から〝自尊心の育み〟がいかに大切かを述べられた。そして自尊心を育むには、「他者からの無条件の受容が必要」と指摘された。

講演②「今日の社会福祉問題~社会福祉事業、社会福祉法人、福祉人材確保を考える」

川崎医療福祉大学医療福祉学部特任教授* 大田晋(しん)氏

大田氏は、昭和46 年に厚生省(現厚生労働省)入省。老人保健福祉局振興課長、社会・援護局施設・人材課長、老人保健福祉局企画課長等を歴任され、介護保険制度設計において中心的役割を担われた。退官後は広島市助役(現副市長)を務め、平成11 年からは川崎医療福祉大学にて「社会保障における政策・制度論」を担当された。(* 平成27 年3月末で同大を退職。肩書は講演当時)
大田氏は、講演冒頭で「措置制度から利用契約制度へ」の流れを踏まえながら、福祉サービスが市場原理の導入という錯覚に陥りがちであるが、社会福祉事業に携わる者は、利用者の経済力により受け入れの可否を決することはできないという公益性を有する点が、一般の営利企業との違いであると説明された。

その後、福祉施設のリーダー(管理責任者)になるためには、〝制度(法律)にいかに精通しアンテナを張っておくか〟を力説された。福祉事業は国民生活の安心・安定に直結することから、事業者には「法律(法令)を遵守しながら福祉サービスを提供し、行政の監視・指導を受ける」厳格な枠組みが設けられている。福祉施設・事業者には、国民(利用者だけでなく費用負担者でもある)の信用・信頼があってこそ成り立っているという自覚を持ち、今こそ〝地域における絶大なる信用と信頼〟が求められていると強調された。
また、各サービスに定められた公定価格についても、「全事業者に該当する画一的な基本額の増加を抑えて、〝加算〟で差をつける」という流れで、現在の福祉行政は動いていると述べられた。その理由は、行政側からみて財源調整が容易だからであるとのことであった。
最後に、社会福祉法人の当面の問題として、小規模法人での人事異動の困難さや人材確保の問題等についても触れられた。国民に社会福祉法人の意義を論理的に説明できるように、法人経営者並びに施設管理者が近代的な財務管理や人事管理をしていく必要があると説かれた。
講師による制度設計の裏話を交えた話に、参加者も皆、真剣にメモを取りながら聴講している姿が印象的であった。

(文責 熊本県福祉施設士会会長 岡田好清)