ブロック・都道府県福祉施設士会の活動報告
第26回九州・沖縄ブロックセミナー佐賀大会 開催報告
佐賀県福祉施設士会は、平成27 年6月25日(木)~26日(金)にグランデはがくれ(佐賀市)において、第26回九州・沖縄ブロックセミナーを開催した。九州沖縄地区をはじめ、北海道、兵庫県、高知県、徳島県、香川県から114 名の参加申し込みを得て、なごやかかつ盛大に進行することができた。各講演の概況を報告する。
講演①「人材確保の秘訣」
講師:らしさ研究所代表 門野友彦氏
門野氏は、長年リクルート社で求人、人材確保の仕事に携わったノウハウをもとに、スライドを使いながら福祉業界の求人のあり方について語られた。今まではややもすると「採用してやる」という、いわゆる上から目線での求職者への対応がまかり通っていたのではないか、また、福祉は3Kの仕事であるからという思い込みが業界にあったのではないかと指摘をされた。一方で、福祉はこれからの成長産業であること、処遇も他業種よりはむしろ高水準であると説明、求人側は自信をもって、求職者の立場にたっての就活活動への対応をすべきであり、そのノウハウを伝授された。求人難に悩む経営者にとって、目からウロコがおちるような示唆に富んだ内容であった。
講演②「寄り添うこころ 思いやりとやさしさと」
講師:佐賀新聞社 常務取締役編集主幹 冨吉賢太郎氏
佐賀新聞社論説委員として、また、同紙コラム「有明抄」執筆者としての取材活動の経験から、特に福祉にかかわるエピソードをもとに、「人に寄り添うとはどういうことなのか」を熱を込めて語られた。一つひとつのエピソードに冨吉氏の「ひと」に対する深い洞察と温かいまなざしが垣間見られる感銘深い講演であった。
初日夜の交流会のアトラクションでは、社会福祉法人済昭園の職員のみなさまの応援をいただき、太鼓による「ソーラン節」「無心太鼓」の演奏が披露された。
公演「いのちと夢のコンサート」
講師:作曲家 弓削田健作氏
弓削田氏は、32 歳の若さで国内のみならず海外にも活動の場を広げている合唱作曲家である。弾き語りを中心とした演奏で、ハイトーンの澄んだ声が聴衆の心にしみた。高齢者施設、障害児者施設、保育園、幼稚園、小学校、被災地域等、数多くの訪問活動を通して培われた弓削田氏の人への優しさが、改めて福祉の心を思い起こさせてくれたように感じることができた。
文責:佐賀県福祉施設士会会長 藤谷 顕)
平成27年度 熊本県福祉施設士会研修会 開催報告
熊本県福祉施設士会は、5月27日(水)に、平成27 年度熊本県福祉施設士会総会並びに研修会を、熊本市中央区の熊本県総合福祉センターにて開催した。総会に引き続いて開催された研修会には、県内外の会員並びに福祉施設職員等34名が参加した。講義の概要を報告する。
講演:「福祉施設士に求められるコミュニケーション力」
講師:熊本大学名誉教授・シニア教授 吉田道雄氏
吉田道雄氏は、「グループ・ダイナミックス(集団力学)」を専門とする教育学博士である。今回の講演では、「望ましい人間関係を実現するための二つのスキル」について、身近な話題を交えながら語って頂いた。
グループ・ダイナミックスに関する研究成果によれば、人間が幸せに生きる社会を作り上げていく上で、①人間は集団で生きていること、②集団の社会規範をうまく作り上げていくこと、の2点が非常に重要であるということであった。具体例として吉田氏は原子力発電所の安全管理から説明した。「ハード面のfail-safe(※)だけでは安全の実現はおぼつかない。“これはまずいのではないか”といった思いを抱くfeel-unsafe(危機を感じ取る)の感受性と、それを表明できる職場の雰囲気が重要である」と指摘。つまり、同僚同士で気軽に問題を指摘し合える職場環境の構築が、リスクマネジメントを始めとした危機対応の際に不可欠であるとのことであった。
加えて、施設長や管理者にとっては、職場の人間関係づくりは、「まずいことを隠す」つまり「組織の隠ぺい体質や不正」を防止する上で不可欠であるとした。業務マニュアルももちろん大切であるが、何より各自の「心の持ち方〟」こそが、組織における安全の実現に大きく力を発揮するとのことであった。
リスクマネジメントの重要性が声高に叫ばれている現在、仕事をする際には、ヒューマンエラーは必ず起こるものであるという認識をもつことが重要である。吉田氏は、講演のまとめとして、「知識があっても事故は起こる。そこに、知識を生かす意識が必要であり、さらに意識が行動になってはじめて安全が実現する。間違ったら謝ることに快感を覚えるような組織・環境が大事だ。こうした職場風土がなければ、ミスや事故につながるヒヤリハット体験も、表に出てこない」と述べた。
聴講した参加者にとっても、安全管理が高度に要求される福祉施設を経営する立場から非常に興味深い研修内容であり、講師の巧みな話術もあり熱心に聞き入っていた。研修会終了後は、講師を交えた懇親会が催され、多くの参加者が集った。
(文責 熊本県福祉施設士会会長 岡田好清)